
二月十一日午後二時より、赤鬼は総身赤の装束で固めた巨躯を白の太い紐でか
がり、虎の皮の褌を締め、赤と銀の「だんだら」巻の撞木をかざし、赤い髪を後
ろに長く垂らし、赤鬼の面を被り、橙を刺した御幣を背に負っている。
天狗は具足に身を固め、太刀を佩き、侍鳥帽子を頂き、薙刀を持ち、鼻高の面
を被っている。呼太鼓を聞いて赤鬼が多数の警固の若者を従え広前へ走って来る
とき、続いて天狗を先頭に司天師と笹良児が繰り込んで、参道の中程に控えてい
る。
まず、赤鬼は儀調場(八角)の中に入って、跪いて神前に祈念してから、撞木
を打振り、高足取にて電光型に天狗に向かって進み、それから「からかい」が始
るのである。
赤鬼が手を上げてさし招くと、天狗もこれに答えて、同じく手を上げて招き、
天狗は薙刀を構えて、大地を踏みしめながら進み寄り、跳び上がって赤鬼に迫れ
ば、赤鬼は儀調場の前まで退き、日の丸の扇を上にかかげてたたかいを挑めば、
鼻高天狗も日の丸の扇で応え、それより広前をあるいは退き、あるいは進み、相
合った時、赤鬼はここで神秘のからかいの所作を行なう。天狗は怒って薙刀を持
ち直して赤鬼に向かう。
かくて、赤鬼は再三挑戦するが叶わず、だんだん追いつめられ、八角のところ
まで来て、遂に支え切れずして遁れ出る。この時、茶色の裃を着けた赤組の警固
の若者は、赤鬼を取囲みながら「アーカーイ」と口々に叫びつつ二の鳥居まで逃
げる。
やがて引返して社務所に来て、供物のタンキリ飴の土産を置いて境外に走り出
て、氏子の町々を駈け廻るのである。この時、茶色の裃を着け、赤足袋をはき、
タンキリ飴の入った袋を持った赤組の大勢の若者が「アーカーイ」と呼びつつ、
タンキリ飴をまき散らすので、群集は争ってこれを拾うのである。
鬼祭しおりより転載。